50代になると片足立ちができなくなるのはなぜ?~バランス能力は鍛え直せる~

スタジオレッスン風景

「ちょっと片足で立ってみてください」と言われてやってみると、「あれ? 思っていたよりグラグラする……」。以前なら立ったまま履けていた靴下も、最近は壁や椅子につかまらないと履きにくい。

当スタジオでも「昔はできたのに!」と悔しがる方がいらっしゃいます。でも、ここで「歳だから仕方ない」と諦める必要はありません。

実は片足立ちは、単純に脚の筋力だけで決まるものではありません。筋力、足裏の感覚、関節の位置を感じる能力、視覚、平衡感覚、そして脳から筋肉への指令。私たちはこれらを瞬時に組み合わせながら片足で立っています。

だから逆に考えれば、片足立ちに必要な能力には、トレーニングできるものがたくさんあるということです。

目次

まず、片足で10秒立ってみましょう

安全のため、壁やテーブルなど、すぐにつかまれる場所で行ってください。
靴を脱いで両足で立ち、両手を腰に置いて片方の足を床から離します。目は開けたままです。

さて、10秒間立てるでしょうか?

簡単だった方もいれば、「えっ、こんなにグラグラするの?」という方もいるでしょう。
でも、できなかったからといって落ち込む必要はありません。

これは合格・不合格を決める試験ではなく、まず「今の自分のバランス能力を知る」ためのチェックです。

両足立ちと片足立ちの大きな違いは、身体を支える面積です。片足になった瞬間、身体を支えられる範囲は一気に小さくなります。

その狭い範囲から重心が外れないように、足首を少し動かしたり、足の指で床を捉えたり、お尻の筋肉を働かせたり、上半身の位置を変えたりしています。本人はじっと立っているつもりでも、身体の中ではかなり忙しいことをしているのです。

片足立ちに必要なのは「筋力」だけではない

「片足立ちが苦手なのは脚の筋肉が弱いから」と思われがちですが、それだけではありません。

まず必要なのは、もちろん脚とお尻の筋力です。特にお尻の横にある「中臀筋」は、片足になったときに骨盤が横へ傾くのを防ぐ重要な働きをしています。太もも、ふくらはぎ、足首周辺の筋肉も一本の脚で身体を支えるために働きます。

次に重要なのが足裏の感覚です。「右に体重が寄った」「かかと側に乗りすぎた」といった情報を足裏から脳へ送っています。つまり足裏は、地面と接しているだけでなく、バランスを取るための「センサー」でもあります。

さらに、筋肉や腱、関節などから「自分の脚が今どの位置にあるのか」を感じる固有感覚があります。目を閉じても膝が曲がっているか伸びているか分かるのは、この働きがあるからです。

そして視覚と前庭感覚。目から入る「床はここ」「身体はこの位置」という情報と、耳の奥にある前庭器官から伝わる身体の傾きや動きの情報も利用しています。

つまりバランス能力とは、筋力+目+耳+足裏+関節などから集めた情報を、脳が瞬時に処理して身体を調整する総合的な能力なのです。

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バランス能力は年齢とともに変化する

片足立ち能力は年齢とともに変化します。筋力だけでなく、感覚機能や神経系、反応速度など、さまざまな変化が重なるためです。

特に中高年以降、「以前よりグラグラする」「片足で靴下を履きにくくなった」と感じることは決して珍しくありません。実際、片足立ち能力は中高年以降の身体機能を見る簡便な指標として、さまざまな研究でも使われています。

2022年、50~75歳の男女1,702人を対象に、『片足で10秒間立てるか』を調べた興味深い研究が発表されました。

その結果、約5人に1人が10秒間の片足立ちを達成できませんでした。そして平均7年間の追跡期間中、10秒間の片足立ちができなかったグループでは、できたグループより死亡リスクが高いという関連が認められました。

ただし、これは『10秒立てないと寿命が短くなる』という意味ではありません。片足立ち能力には筋力や神経機能、身体活動量、健康状態などさまざまな要素が反映されます。

そのため、片足立ちは中高年以降の身体機能を見る簡単な方法の一つとして注目されているのです。

片足立ちは鍛え直せる?

ここからが今回、一番お伝えしたいところです。
答えは、「改善できる可能性は十分あります」

健康な65歳以上を対象にした23のランダム化比較試験をまとめた研究では、バランストレーニングによって、静止した状態だけでなく、動いているときのバランス能力にも改善が認められました。

つまり、「歳を取ったからバランス能力は落ちる一方」ではないのです。

片足立ちでは「何秒立てたか」だけを見ない

当スタジオで片足立ちを見させていただくとき、私は「何秒立てたか」だけでなく、どんな姿勢で立っているかにも注目しています。

まず見たいのが膝の向きです。片足になったとき、大腿部が内旋する傾向のある方では膝が内側へ入りやすく、反対に外旋する傾向のある方では膝が外側を向くことがあります。

ここで膝だけを「正面に向けよう」とするのではなく、股関節から脚全体がどのように使われているのかを見ることが大切です。

もう一つ注意したいのが足裏のアーチです。片足立ちでは一本の足で全体重を支えるため、足裏は単なる「土台」ではありません。足部のアーチを保ちながら、足裏から得られる情報を使って細かな姿勢調整をしています。

そして意外に大切なのが上半身です。グラグラしないように頑張るあまり、身体を固めたり、肩をすくめたり、背中を丸めたりしてしまう方もいます。

そこで意識したいのが、ピラティスでも大切にしている『エロンゲーション』です。

頭のてっぺんが上から引っ張られているような感覚で背骨を上下に長く保ち、足裏で床を押しながら頭頂部は上へ伸びていく。身体をただ固めるのではなく、上下に伸びながら安定する感覚をつくります。

片足立ちは「10秒できた・できなかった」だけで評価するものではありません。

膝はどちらを向いているか。足裏のアーチは保てているか。上半身はつぶれていないか。

こうしたところを注意深く見ていくと、その人がなぜ片足立ちを苦手としているのか、そのヒントが見えてくることがあります。

だから私たちは、片足立ちが苦手な方に「毎日片足立ちをしてください」と言うだけではなく、その人の身体の使い方を見ながら、必要なトレーニングを考えることが大切だと考えています。

今日から出来る片足立ち練習

まずは安全を最優先にして、壁や丈夫な椅子など、すぐにつかまれる場所で行います。

最初は手をついて構いません。そこから「両手→片手→指先だけ→手を離して5秒→10秒」と、少しずつ支えを減らしてみましょう。ただし、グラついたらすぐにカラダを支えられる状態でやってくださいね。

最初から30秒を目指す必要はありません。「昨日より1秒長くできた」でも立派な進歩です。

※転倒歴がある方、めまいがある方、脚や関節に強い痛みがある方などは、無理に一人で行わず医療専門職や運動指導者に相談してください。

片足立ちをしてみて「5秒しかできなかった」「昔は靴下を立って履けたのに」とショックを受ける方もいるかもしれません。

でも、私はそこで落ち込む必要はないと思います。

『今の身体の状態に気づけた。』まずは、それで十分です。

片足立ちに必要な筋力やバランス能力には、トレーニングによって改善できる部分があります。だから大切なのは、誰かと比べることではなく、「今日の自分」と「これからの自分」を比べることです。

1か月後、もう一度同じ場所で片足立ちをしてみてください。
「あれ? 前よりグラグラしない」「10秒が意外と楽になった」
そんな変化が起こるかもしれません。

片足立ちは、「老化を確認するテスト」ではなく、「これからの身体を良くするためのスタート地点」
「できなくて悔しい!」という気持ちも、決して悪いものではありません。
その悔しさを、これから身体を変えていくきっかけにしてみませんか?

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